【バドミントン】物部咲月選手のインタビュー記事を公開しました
- 2019/06/05
- インタビュー
相手を観察して試合に打ち勝つ。成長のカギは「集中力」
現在、文化学園長野高等学校でバドミントン部に参加し、ダブルスで県大会の上位に入賞する等の実績を持つ物部咲月選手。指導する竹内慶太郎監督は、物部選手の「観察力」を高く評価していますが、更に上のレベルに辿り着くために必要なカギは「集中力」だそう。
母親の影響で始めたバドミントン
――まずは、バドミントンを始めたきっかけを教えてください。
物部選手:小学1年生の頃、母親がバドミントンをしていて、その練習について行って一緒にやっていたのがきっかけです。シャトルが当たる感覚が楽しかったので、夢中になってしまいました。
――現在は主にどういった練習をされていますか?
物部選手:今は団体戦でトップダブルスとして出場するので、最近はダブルス練習がメインです。ダブルスのパートナーとローテーション練習、前衛・後衛の練習をしています。ダブルス練習の前には、全員で基礎体力を付けるメニューでウォーミングアップをしています。
――ダブルスのパートナーと呼吸を合わせるために気を付けていることはありますか?
物部選手:普段からペアの人とコミュニケーションを取る事、ローテーションの練習をするときに掛け声をかけ合うことを意識しています。コートの中ではできるだけ一緒に行動するようにしています。
――これまで出場した試合の中で、これは嬉しかった、これは悔しかったという点で印象に残っている場面を教えてください。
物部選手:中学3年生の時に長野に来るまでは、島根でずっとダブルスプレイヤーとしてやってきました。長野に来てから、シングルスで出場した大会でベスト16止まりだったのが、次の地区大会で優勝した時は嬉しかったです。
逆に悔しいと思ったのは、北信越大会で富山国際の選手とダブルスで試合をして負けた時です。内容はまあまあ良い試合が出来ましたが、最近再戦した時にボロボロに負けてしまいレベルの違いを感じたので、自分の努力が足りないと実感しました。
ネット越しに相手の様子を観察する
――ご自身のプレースタイルについて教えていただけますか?
物部選手:フェイントを使って、相手を崩して自分にチャンスを作るスタイルで、相手の意表をつくようなプレーも得意です。
――そういったフェイントを多用するプレースタイルはいつ頃構築されましたか?
物部選手:最初にやり始めたのは、小学5年生ぐらいです。それまでは、特にスタイルは持たず、勝つためにはどうするかを練習から取り組んでいました。
――相手の意表をつくプレーが得意ということですが、初めて対戦する選手の場合、どんな所を最初に見ていますか?
物部選手:相手が何をやっているのかを見ています。練習中や話をしているところ、どんな行動をしているのだろうとか。
――行動をしているところを見て、選手の性格や試合の動きがわかることもありますか?
物部選手:何となく感じることもあります。ぼーっとしながら相手を見ている中で「あっこういう人だな」と何となくわかって、その見ていた部分が試合で出てくるとチャンスだなと思います。
――監督は、物部選手のプレースタイルについてどう評価されていますか。
竹内監督:バドミントンで大事なところでもありますが、ネット越しに相手をしっかり見るという観察力に長けていると思います。相手が次こうしてくるだろうということに対して、それをうまく外すことについては、他の選手よりはたくさん感じることがあります。
――「人を観察すること」について、指導者目線ではどうお考えですか?
竹内監督:これを教えるのは難しいですよ。元々生まれ持ったものでもありますから。
――竹内監督は指導者として、テクニカルな面以上にメンタル面のことというのは相当気を使われている部分もあるかと思いますが、その点はどうでしょう。
竹内監督:試合というのは、起きて欲しくない事が連続して起きます。そういう場面で動揺が行動や顔色に出るというのは、小学生・中学生・高校生で特に多いです。だから練習の中でこういう事があるかもしれないということを、あらかじめ頭の中に入れさせておいて、いざ試合に臨んだ時でも、それが想定内で試合を終えられるような練習を普段から取り組んでいます。
――いざ、試合になると選手に声をかけるパターンも変わりますか?
竹内監督:そうですね。普段の練習中は厳しいスタイルで選手と接していますが、試合中は一緒に戦い、つらい時でも励ましていくのが自分の仕事かなと思っています。
――試合中のタイムアウトで気を付けることはありますか?
竹内監督:状況にもよりますが、ただ単純に励ます時もあれば、相手の作戦についても想定できる範囲で話をして、本人が気づいてないことを助言してあげたりしています。難しいですけどね。
一番多く失敗しているのは「痛くても言わない」選手
――試合に臨む上で、意識して気をつけている点はありますか?
物部選手:私は怪我をしやすい体質なので、普段から(整体など)身体のメンテナンスに行っています。それと自分でご飯を作る日には、主食・主菜・副菜・乳製品をバランスよく採るようにしています。
――食事はいつごろから気をつけるようになりました?
物部選手:中学3年生で長野へ来て、自炊をするようになってから始めました。母親が栄養士の資格を持っていて「食事には気にかけないといけない」と言われていたので「何をすればよいのか」と母親に相談しながら進めていました。
――身体のメンテナンスについてはいつごろから徹底するようになりましたか?
物部選手:長野に来てからですね。自分でストレッチもしていますが、自宅近くの接骨院でマッサージをしてもらっています。
――バドミントンをやっていると腰の負担が大きいかと思いますが、やはり腰のケアに一番力を使われますか?
物部選手:腰もそうですが、足の怪我も多いので重点的に気をつけています。
――監督がジュニアの選手を指導する上で、気を付けていることはありますか?
竹内監督:選手の前でも話をしていますが、選手には3パターンあると考えています。
1)調子を的確に判断して、練習があっても選手の口から「痛めている」と言える選手
2)「痛くないのに痛い」と言う選手
3)「痛くても言わない」選手
このうち個人的に一番気を付けないといけないと思うのは「痛くても言わない」選手です。我慢や忍耐は日本では美しいという考えがありますが、7年間このチームに関わらせて頂いて、一番多く失敗しているのは「痛くても言わない」選手なんです。
そういう選手に対して、(痛いと)言いやすい雰囲気を作ってあげることも大切ですし、見て判断できる部分があれば、そうしないといけないと思っています。もちろんこの3パターンに当てはまらない選手もいますので、そこをどうしていくかという部分も日々悩んでいます。
――成長期の子どもたちですとやはり成長痛(オスグッド・ジャンパーニー)も心配な要素だと思います。そういった点に対してのケアは如何でしょうか?
竹内監督:現在は社会人チームとも一緒に練習をしている関係で、週に1回トレーナーさんに体育館へ来てもらっています。自分もバドミントンばかりをやってきたので、そういった知識はまだまだ分からない部分もたくさんあるので、気軽に相談できるのはありがたいと思っています。
――物部選手は痛いと思った時は痛いと言えますか?
物部選手:言わないといけないなと思った時は言いますが、我慢できると思えば、そのままプレーしています。
「集中力」を維持させるカギは「睡眠」
――物部選手の今後の課題についてお聞かせ下さい。
竹内監督:本人と最近も話をしましたが、先日の3日間の遠征中も最後まで「集中力」が持たなかったですし、これまでも合宿等ではどこか1日集中力が崩れた日があったりします。
ただ、これから大会のレベルが上がっていくと3日間や1週間集中し続けるというのは当たり前ですから、最初から最後まで集中を切らさずにパフォーマンスをいかに維持できるかという点が今後の課題です。
――集中力を持ち続けるというのは中々難しいことだと思いますが、物部選手は「集中力」を維持することについてどのように捉えていますか?
物部選手:他の選手よりも集中力が続かないなと自覚しています。パターン練習をしている時でも、1回集中力が切れてしまうとミスが続いてしまうので集中力のキープは課題だと思います。
――同世代の高校生にとってそれだけの集中力を維持することはどうなのでしょう。
竹内監督:完璧にこなせる選手は一握りです。だからこそ、練習で集中力が切れた時に私も注意はしますが、良い勉強のタイミングだと思っています。そういう自分をどう取り戻すのかも、練習だと思っています。いつまでもズルズルしてしまうと、もう負けになってしまいますから。
――試合を終えてからの振り返りはどのようにされていますか?
竹内監督:試合のビデオ等がある場合は、ビデオを見ていますが、私から一方通行になっていますので、これからはコミュニケーションを取っていくことが大事と思っています。これが出来れば、レベルアップにも繋がります。
物部選手:(ビデオを見て)自分で返したコースが悪くて、攻められてしまった時は、次はこうして打つとか、どこに返したらよかったかなと考えています。
――それでは、物部選手の今後の目標をお聞かせください。
物部選手まずは、※5月10日から始まる大会では団体戦、ダブルス、シングルスで全勝して3冠を取る事と、高校最後の大会までに全国でベスト8までに入ることです。その先は、実業団から勧誘があれば入りたいし、大学からも声が掛かればそこに入りたいと思っています。日本代表にも選ばれたいです。
※5/10の大会では物部選手はダブルスで優勝、シングルスではベスト4の結果を残している。
――今後更に上のレベルを目指していくうえで課題はどこにありますか?
物部選手:メンタル面もそうですし、技術面や体力面についても全国レベルの他の人たちより頑張らないといけないと思っています。
――現在目標にしている選手はいますか?
物部選手:トナミ運輸の大堀彩選手です。自分と同じく長身で、それを生かしたプレーをしていて格好いいなと思うので、自分もそういったプレーができるようにしたいです。
――これまでに世界レベルで活躍してきた歴代の女子ダブルスペアで言えば、どのペアのスタイルが自分たちに近いと思いますか?
物部選手:タカマツペア(髙橋礼華・松友美佐紀)が一番近いなと思います。私は前衛が得意ですが、ペアを組んでいるもう一人は後衛が得意で、彼女が後方でどんどん打ちながら前衛で私が決めるというパターンが多いので、その辺りが似ているなと感じています。
――竹内監督から物部選手の将来像をお聞かせください。
竹内監督:まだまだ満足できる成績ではないので、高校在籍中にもっと高い結果を出してもらいたいなと思っています。いつ才能が花開くかは分からないので、そこまでしっかり頑張ってもらいたいです。
――監督ご自身では、その才能が開花するにはこうすればもっといけるんじゃないかという部分は見えていますか?
竹内監督:集中しきった時のゲームは、本当にミスが少ないです。この集中力が常日頃出せるようになれば、かなりレベルが上がるのではないかなといつも思っています。やはり集中力が課題ですね。
――集中力をあげるためのアプローチはどういう所にあると思いますか?
竹内監督:こんな偉そうに言って、私も昔から完璧だったわけではないのですが、変わったタイミングって、一度大きな成績を上げた時からになるんですね。集中しきって良い想いができたということが一回でも自分の経験として残ると、その先は自然と頑張れるようになってくるのではないかと。だから、一回その山を越えさせるところまでが私の仕事だと思っています。
――物部選手の中では「集中力」が大きなキーワードになっているわけですね。物部選手自身では、集中力をあげるために何か試していることはありますか?
物部選手:私は授業中に結構寝てしまうことがあるんですけど(笑)、一時期授業中に寝なかった時期があって、その時期は練習や試合でも集中力が上がったので…授業中に寝てしまうことは直さないといけないと思います。
夜型の生活になりがちで、朝起きてからエンジンのかかりが遅いので睡眠から改善したいですね。
安心して大会に出場するためにもアンチ・ドーピング認証は大事
――DR.SENOBIRU(ドクターセノビル)を飲み始めて、どれくらいですか?
物部選手:半年ぐらいです。
――DR.SENOBIRU(ドクターセノビル)を飲んでみて、率直なところいかがですか?
物部選手:ドクターセノビルは味もおいしくて飲みやすいです。好きなのはパイナップル味で1日1回飲んでいます。元々あまり風邪を引くタイプではないですが、前よりも体調管理できるようになりましたし、免疫が付いたのか風邪を引いた時でも前よりは治りやすいのと、疲労も前より取れやすくなったのは感じます。
――DR.SENOBIRU(ドクターセノビル)がアンチ・ドーピング認証(インフォームドチョイス)を受けていることについてはいかがですか?
竹内監督:物部は国体の強化指定選手にもなっていますが、国体に行くとランダムで選手が呼ばれてドーピング検査を受けることがあります。私も高校生の時にたまたま選ばれて、検査したことがありますが、当時は知識など無くて、たまたま摂取していなかったのでラッキーでした。摂取しても問題ないというのがわかっているのは、すごくありがたいです。
サプリメントは飲むことが習慣になっていると思いますので、大会のために飲むことを止めるというのも無いですし、気にしなくても良いのは大きいですね。
取材後記
「人を観察するのは好き」と話しながら、なかなか「集中力が続かない」と漏らす物部選手。竹内監督も「集中力さえ続けば」と希望を抱かれるほど、物部選手は今後の可能性を大いに秘めています。ダブルスでは前衛を得意とし、相手をネット越しから見つめるその視線は、いずれ世界を捉えてもおかしくはありません。タカマツペアや大堀彩選手のように、将来世界の舞台で活躍できることを期待します。
プロフィール
物部咲月(ものべさつき)
2002年生まれ、島根県出身。中学卒業後は文化学園長野高等学校に進学。ダブルスの前衛を主戦場として、トップカテゴリーに進むことを目指す。「観察力」の鋭さに定評のある物部選手は「集中力」を磨くため日々奮闘中。